
今年4月には発売されていたのですが、ポーランドの郵便局から日本に発送することができず、ようやく入荷となりました。実際のところ今でもNGなのですが、高くつくけれどUPSで送ってくれました。ありがとう、アダム。
メーカーはポーランドのStrategemata。ということは代表&ゲーム・デザイナー&グラフィック・デザイナーのAdam Niechwiejさんの仕業かと思ったら、Stephen Poleさんのデザイン。コマンドマガジン第125号の『ロシア戦役』とか、WDGの東部戦線/西部戦線/太平洋戦争のキャンペーン・ゲームを、だいたい同じようなシステムでつくっています。これ、褒め言葉であります。
キャンペーンを語るなら兵站を語れと言わんばかりに、いずれも兵站ネットワークの構築を中心に据えたゲーム・システムを用いています。このネットワークがないと戦略の立てようもない(部隊が補給切れになる)ので、兵站抜きで戦略を語ろうとする者は憤死間違いなしなのです。素晴らしい。
この兵站ネットワークを支えるのが毎ターン両軍に与えられるリソース・ポイント(RP)で、RPは兵站基地の維持と新設──つまり兵站線の伸張と、部隊の活性化──つまり軍事作戦に消費されます。前者にRPを咲かないと軍隊を先に進めることはできず、かと言って軍隊を行動させないと兵站線を前進させることもできない。かーっ、この葛藤。こういうの好きでしょ? 好きだよね?
この戦場の特徴は、中央のプリピャチ沼沢地があって「絶対に」戦線が南北で分断されること。ポーランド軍はワルシャワからブレストあたりまでは1本の兵站線で済むので、ロシア軍の北(西正面軍: トゥハチェフスキー)が左側面をさらしてくれるようならそこから反撃を加えることも可能。一方のロシア軍は史実の轍を踏まないよう、南北で歩調を合わせてブレストあたりに戦力を集中、ポーランド軍主力を撃破してから南北それぞれが勝利条件都市を狙う、という作戦も展開できます。
毎ターンのRPを決まっているのでゲーム全体の流れはある程度固定されています。例えば本作では序盤、ポーランド軍のほうが多くのRPを持っているので攻め込みやすく、兵站ネットワークを拡張しやすい。中盤あたりからロシア軍が盛り返し(マップ外の白軍との戦闘に勝利し、リソースを回せるようになるのです)、夏には攻守が入れ替わることでしょう。しかし「戦場の摩擦」があります。両プレイヤーは色違いのダイスを振り、基本RPに白ダイスの目をプラス、赤ダイスの目をマイナスします。基本RP(10前後)に最大でプラス・マイナス5されるわけです。お互い1/36の運不運に見舞われると、差の合計は10となり、ついていない人は180番手くらいのサンドペーパーで洗顔するくらいの摩擦を味わうことになります。

本作を一行で表すなら「兵站を語る」。
お楽しみのイベント・カードや歩兵/騎兵/砲兵のコンバインド・アームズ、部隊の向きと機動など、その他ユニークな要素もありますが、兵站。とにかく兵站。兵站を語るゲームなのです。
ポーランド以外で今年ゲーム化された「ヴィスワ川の奇跡」は、1920年の7月と8月の2カ月の軍事作戦に焦点を当てた拙作『ワルシャワ1920』です。こちらのログラインは「機動戦」になるでしょうか。遊び比べていただけると幸いです。
by yas_nakg
| 2020-09-29 16:08
| SUGOI