ゲームに限らず本にしても映画にしても、あるいは旅にしても、人生を少しばかりよりよいものにしてくれるものです。
で、ゲーム。「すごい」ゲームに触れると人生が少し豊かになった気がします。ゲームと言ってももっぱらウォーゲームなので、歴史/戦史の新しい解釈を学べるとか、全く知らない時代のことを体感させてくれるとか、「自分に変化を与えてくれた作品」は「すごい」のです。
最近、実際にプレイしてすごいと感じたのは『耳川の戦い』。「チット=ドリブンはおみくじ」とか言う人にこそプレイして欲しい(はい、プレイしました)。3つのFOWをシステムに盛り込んだBSSも悪くないですが、『耳川』はチットに物語性を持たせていたのが秀逸。
で、プレイもしていないのにすごいゲームに出会ってしまいました。『Operation Ichi-Go(OIG)』、Against the Odds第52号。デザインはタイ・ボンバ。
大陸打通作戦──一号作戦は軍事的合理性を見つけにくい戦いであるがゆえ、一定の合理性に基づくウォーゲームには向かないテーマであると感じておりました。「
[証言記録 兵士たちの戦争]中国大陸打通 苦しみの行軍1500キロ ~静岡県・歩兵第34連隊~」を見た後だと余計にそう思われたわけです。同番組の中で勝又さんは「意味がなかった、無駄な作戦だったとは言いたくない」と語っておられますが、前線の兵士をしてそうした葛藤に苦しませるわけですから、ゲームとしての合理性との折り合いをつけにくい。
「『
When Tigers Fight』の中国戦線だけ切り出したんちゃうの?」と下衆の勘繰りをしたことをお詫びいたします(WTFは、ウ号作戦と一号作戦が戦略的に連結していた、という大胆な視点に基づいた、これはこれですごい作品です)。
OIGのマップをご覧ください。台湾が入っているのがわかるかと思います。

OIGは一号作戦からゲームが始まりますが、途中でアメリカ軍がフィリピンに侵攻するか、コーズウェイ作戦を行うのかを判定します。コーズウェイ作戦が実施される可能性は低いですが、一号作戦の進展状況によって確率が高まります。日本軍が大東亜縦貫鉄道の打通に成功する、アメリカ軍航空基地の覆滅に成功する、そして中国軍が港湾都市を支配する、重慶や昆明に日本軍の脅威が迫っている……こうした要素は一号作戦の勝利条件ですが、同時にコーズウェイ作戦のトリガーにもなるのです。一号作戦の勝利を目指すほどアメリカ軍がやってくる確率が高まるこの葛藤!!
コーズウェイ作戦が発動されるとアメリカ軍はまず台湾、次に中国本土に上陸して、誰も経験したことがない戦争が始まります。勝利条件も総取っ替え。日本軍にはフィリピンの第14方面軍が追加され、台湾、あるいは中国本土へ海上輸送することになります。この海上輸送がどれだけ危険なものか、説明しなくてもわかりますよね? うまくいけば、薫空挺隊(遊撃第1中隊)が台湾戦に投入され、戦車第2師団がアメリカ軍の前進を阻むかもしれません。あるいはアメリカ軍の第11空挺師団が降下し、B-29の戦略爆撃で日本軍の兵站にとどめを刺すか。
合理性のない戦いに合理性を求めた結果、歴史上のwhat-ifに行き着いて、ゲームとしての合理性が保たれる。と同時に、what-ifの可能性があったということは、そも一号作戦は「意味がなかった、無駄な作戦だった」とは言い切れないことに気づかされます。やるな、TB。
ゲームとしてどうかはやってみないとわかりませんが、そんなことは気にならないくらい(!!)、本作は知的興奮を与えてくれました。