人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ほぼ日

ワルシャワ蜂起とジョージ・オーウェルの怒り

Taktyka i Strategiaの『Uprising 1944』(以下U44)をプレイしました。

1944年のワルシャワ蜂起をテーマにしたウォーゲームは多くありません。メジャーどころではST誌付録の『Warsaw Rising』(86年)があるくらい。同名のゲームが78年にFusilier Gamesから出版されていたようですが、詳細不明です。というかFusilier Gamesって初めて聞いた気がする。

U44は蜂起から75年目に当たる今年、ポーランドのメーカーから出版されました。

ワルシャワ蜂起とジョージ・オーウェルの怒り_b0142122_10393946.jpg
▲ゲットーの解放に成功したポーランド国内軍。ドイツ軍からかっぱらったパンター装備のZoska大隊が活躍した。

U44はワルシャワ蜂起を生真面目にシミュレートしたウォーゲームで、基本エンジンはエリア=インパルス。ただし両軍にコマンド・ポイント(CP)が設定されており、1ターン中に実行できるインパルス数に制限が設けられています。序盤はポーランド軍多めで中盤からドイツ軍が盛り返すという展開。また、両軍がCPを費やしている間は移動しか発生せず、インパルスが終わってから戦闘フェイズが始まるのがユニーク。

これで何が表されるかと言えば、ポーランド軍にCPの余裕があるうちは、いろんな場所から戦力を1カ所に集めて、CPに余裕がないドイツ軍を袋だたきにできる。CPに多少余裕が出てきたドイツ軍が同じことをやろうとしても、ポーランド軍にCPが残っている限りは下水道を使って脱出、戦闘を回避できるのです(地下道の移動は判定を伴うので常に成功するとは限りませんが)。

ユニットになっているのは歩兵戦力だけで、その他の兵科はマーカーとして表されています。エリアごとのスタック制限はユニット数ではなく総戦力数。戦闘解決はオッズ式で戦闘結果表を用います。つまり、相手が守ろうと思えばあるエリアに対する攻撃は1:1の比率しか立たないため、マーカーで表されるその他の兵科による支援、カードで表される戦術などがなければ、攻撃はまず成功しないことになります。

基本的なルールはこんなところで、これに増援や補充、西側及びソ連軍による物資の投下がルール化されています。この物資はポーランド軍ユニットのステップ回復に充てられるのですが、まあ投下成功率の低いこと。高射砲陣地を覆滅すればその確率も上がりますが、そのためにどれだけのポーランド軍部隊が犠牲になるか。

ワルシャワ蜂起とジョージ・オーウェルの怒り_b0142122_10402140.jpg
シナリオは4本用意されており、ヒストリカルなもの、蜂起の準備がもう少しましだったら? という設定、ポーランド独立空挺旅団が降ってくるかもしれない仮想戦2本。勝利条件はいずれも同じで、史実でポーランド国内軍が降伏した10月2日まで、ポーランド軍のモラルが崩壊するかどうか。

このモラルは、ドイツ軍ユニットを撃破したり、エリアを支配すれば高まり、逆にポーランド軍ユニットが撃破されたり、エリアを奪回されたりすると下がります。そこでポーランド軍は序盤、多めのCPを利用してドイツ軍ユニットを各個撃破すること、取り返されてもモラルを失わない目標を奪取することを目指します(ヴィスワ川に架かる橋の制圧や、各地区に支配エリアを置くことで得られるモラルは失われません)。郊外の飛行場を一時的にでも占領できれば大きいのですが、守りが堅いのでさすがに無理。ドイツ軍は、増援が登場する前は部隊を集結させて損害を抑え、増援が集まってからは1地区ごと制圧していくことになります。その際、地下道を使って逃げられると厄介なので、出入り口を重点的に狙うことになるでしょう。

また、ドイツ軍には市街地を瓦礫にすることで地形効果を減じるという戦術があります。瓦礫化をさらに1ランク高めるとそのエリアを完全鎮圧したことになり、そこからはポーランド軍の増援が二度と登場しないことになります。

このように、軍事的合理性を求めるウォーゲームの文法でワルシャワ蜂起を語っているU44をプレイすることで、語られない、あるいは語れないことに
目がいきます。誰だよ、蜂起しろって言った奴は。

確かに、すぐ近くまで来ていたソ連軍が見殺しにしましたが、直前のドイツ軍との戦闘で損耗しており、特に歩兵戦力が欠乏していました(もし蜂起に呼応してワルシャワに突入していたらというifは、別のポーランド製ゲームで検証することも可能です)。スターリンもひどいが、散々蜂起をあおってきた西側メディア、知識人の無責任ぶりはなんなんだと、1944年9月にジョージ・オーウェルが怒りの声を上げていました。米英はソ連を動かせよ。

プレイヤーに歴史的興味を惹起させるのが良い歴史ゲームということであれば、U44は実に優れた作品であると言えるでしょう。ポーランドのウォーゲーマーにも薦められたノーマン・デイヴィスのあれ、高いけど買いますか。



札幌歴史ゲーム友の会。初参加の方もおられたということで、盛況で何より。
> ソ連軍の作戦全体を見てみると、その未調整さに唖然とする
小スケールだからこそ実感できる!?
> 前回見かけたときは我慢したんですけど
我慢は体に悪いですよ。
> 役割をそれぞれで分担する4人がベスト
ご指摘のとおりかと。4人でやると訳わかんなくなって楽しいです。
そろそろ大詰め!?
> 自分としては「これが正しい」といえる根拠を持って理論武装していたとしても、クライアントの「なんか違う」の一言で修正を余儀なくされることもあるということです。
> 確率という根拠をベースとして、「プレイヤーの気持ち良い」を追求することが大事
バイアスを利用すべきだ、ということでしょうね。

by yas_nakg | 2019-10-15 11:58 | ほぼ日

歴史系ストラテジー・ゲームの話が中心です。


by yas_nakg
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30