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【日本すごい!!】ボードゲームに登場する最強日本人とは

【日本すごい!!】ボードゲームに登場する最強日本人とは_b0142122_09344302.jpg歴史を扱うウォーゲームには世相が反映されています。例えば中国がGDPで日本を抜いて世界第2位になった頃から、アメリカでは中国の覇権主義をテーマとしたゲームが立て続けに発表されました。日本版も発売された『レッド・ドラゴン・ライジング』(2008年)はあまりに有名です。副題は「来る中国との戦争」、滾っちゃいますね。

最近、イスラム勃興期をテーマにしたゲーム『アポカリプス・イン・ジ・イースト』(2019年)や『ジハード』(1981年、19年に再版)が発表されたのは、イスラムに対する理解を深めたい(それがどのような動機に基づくかは別として)というムードがあるのかもしれません。

さて、ウォーゲーム華やかなりし頃の1970年代から80年代にかけては、もちろん(幸いにも起こらなかった)第三次世界大戦をテーマにした作品が多かったのですが、80年代中盤からは「日本もの」も増えてきました。その頃から自動車を中心に日米貿易摩擦がいよいよ問題となり、1985年にはアメリカの対日貿易赤字が500億ドルに達し、円高誘導のプラザ合意が発表されました。日本、やばい存在です。

汝の敵、日本を(ゲームで)知れ、てなもので、例えば第二次世界大戦欧州戦線の歩兵戦をテーマにしたカード・ゲーム『アップ・フロント』(1983年)のモジュールとして、太平洋戦線の『バンザイ』(1984年)が出版されました。パッケージ・アートに、当時のアメリカ人の日本人に対する憎悪と畏怖を感じることができます。ゲームの中でも日本兵、強いです。

これがいきつくところまでいくと石原慎太郎を首相とした「ノーと言える日本」が空母〈ヒロヒト〉を配備してアメリカと第二次太平洋戦争を始める『レッド・スカイ・モーニング』(1991年)になりますが、バブル崩壊が始まった頃に出版されても、当事者としてはネタとして笑いにくいものがありました。

さて、時代は流れてジャパン・バッシングからジャパン・パッシングの時代。リアルの世界だけではなく、歴史ゲームの世界でもアメリカのカウンターパートとして中国、あるいはイスラムに注目が集まっているのは冒頭で書いた通りですが、久々に日本が、しかも個人が歴史ゲーム(現代戦)に登場していたので紹介したいと思います。

海賊を壊滅させた男

2012年発売の『ソマリ・パイレーツ』。まだメーカーには在庫があるようです。ソマリア沖の海賊を殲滅するために多国籍軍が軍事行動を起こしたら? という仮想設定の基づく作品で、デザイナーはジョセフ・ミランダ氏。氏は独自の文法でCOIN(カウンター・インサージェンシー)作戦を表現していますが、本作にはそのベーシックな要素がほとんど盛り込まれています。

【日本すごい!!】ボードゲームに登場する最強日本人とは_b0142122_10263232.jpgゲーム・システムを説明すると長くなるのでポイントだけ紹介すると、多国籍軍、ソマリア海賊とも世論やメディアを味方にすることで得られる「ネットウォー・ポイント」を使って部隊を動員したり、作戦を行ったりします。多国籍軍にはズムウォルト級ミサイル駆逐艦や空母打撃群に交じって、ユニークなチットがランダムで登場する可能性があります。

左はカウンターシート(BGGから拝借しました)なのですが、右下に注目してください。一風変わったカウンターがありますが……。

【日本すごい!!】ボードゲームに登場する最強日本人とは_b0142122_10320241.jpg拡大してみましょう。「Sushi Zanmai」と書かれているのがおわかりになるでしょうか。このチットはすしざんまいの社長木村清氏を表しており、多国籍軍プレイヤーがこのチットを引くと、ジブチ、ソマリアで漁業のインフラが整備され、海賊側のネットウォー・ポイントがマイナス50されるというものです(海賊プレイヤーがこれをくらった後で挽回するのはかなり困難)。

すしざんまいの木村社長についてはご存じの方も多いでしょう。「ソマリア海賊を壊滅した」とされる日本人です。詳細はリンク先を参照。

もちろんゲームでは木村社長が述べている通り、多国籍軍海上戦力による海域制圧は欠かせません。海賊の跳梁を許していては多国籍軍側のネットウォー・ポイントが減少していくからです(そして成果をあげないと世論の支持を得られません)。しかし「海賊の多くは小さい船で、持っているのもロシア製の粗末な機関銃だけ。蹴散らしても、ほかに暮らす手段がなければまた海賊に戻るだけ」(*)で、潰しても潰してもチープな海賊船が登場して多国籍軍プレイヤーを悩ませます。ところが「Sushi Zanmai」チットがあれば海賊の支持リソースたるネットウォー・ポイントを根絶やしにできる=漁業をビジネスとして成立させることで、海賊行為をする動機をなくすることができるのです。これは大きい。

『ソマリ・パイレーツ』では、鈴木社長が言うように、武力によるハード面での制圧と、(Sushi-Zanmaiチットによって)ビジネスの機会を提供するソフト面での切り崩しにより、多国籍軍はソマリアの海賊を効果的に殲滅できる様が描かれています。見事なシミュレイション、さすがはジョセフ・ミランダ氏です。

泥沼になりがちなCOIN作戦をたった一人で終わらせる可能性を持つ日本人・木村清。彼が歴史ボードゲームに登場する最強の日本人の一人であるのは間違いないでしょう。

(*)すしざんまい社長が、あの「海賊壊滅作戦」の真相を語った!(賢者の知恵/現代ビジネス)

重要: 今日は4月1日だからな。

by yas_nakg | 2019-04-01 00:01 | ほぼ日

歴史系ストラテジー・ゲームの話が中心です。


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