歴史的背景をよく知らない初めての戦場が一番滾るよねと、かう゛ーるさんとイタリアのゲーム雑誌「パラベラム」の『Inferno sugli Altipani』(IsA)を対戦しました。アジアーゴの戦いを再現する作戦級ゲームです。

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オーストリア=ハンガリー軍は奇襲によってイタリア軍の山岳要塞線を突破しようとしますが、イタリア軍に増援が到着、戦線は破綻することなく、両軍めでたく激しく損耗して決定打を与えることはありませんでしたという、実に第一次世界大戦らしい戦いでした。そもそも


です。しかし、戦略的にはアレな戦いであっても、作戦的にはなかなか興味深いシチュエイションでした。

■悩ましい勝利条件

勝敗はオーストリア=ハンガリー(AH)軍が獲得した勝利得点(VP)で判定されます。都市/町/山頂を支配すること、及び敵ユニットのステップを奪うことで加点され、自軍ユニットのステップを失うことで減点されます。後ほど説明しますが戦闘は基本的に相討ちになるので、いかに効率よく地理的目標を支配するかが大事です。上の写真をご覧になればおわかりかと思いますが、主な進撃ルートは5つあります。

一番左はアジアーゴに向かうものですが、初期配置されているAH軍の戦力が少なく、大きな前進は望めません。その右3つは山道ルートで、AH軍の主要な進撃路になります。一番右は孤立しているアラに向かうもの。主戦線から離れているのでイタリア軍の戦力も少なく、AH軍がアラを占領するのはそんなに難しくありませんが、こちらに向かった部隊が遊兵になるリスクがあります。

IsAがユニークなのは、一般のゲームで言う地形効果がほとんど働かないことです。例えば戦線中央、丘や山地、高山が広がっており「さぞかし地形シフトがきついんやろうなあ」と思われますが、何とゼロ。平地と同じなのです。何が違うかと言えば地形ごとのスタック制限で、悪地形だと攻撃できるユニット数が限られ、大兵力で押し切ることができないわけです。

移動コストも平地と変わりません。つまり、一見すると突破絶対不可能な山岳が眼前に広がっていますが、地形的障害は何とかならないこともない、というレベルなのです。最前線のイタリア軍を排除すれば左右への道路が通じ、兵力の展開が容易になることでも機動の余地が広がります。AH軍が勝利するためには、最低3都市を占領しないと厳しいので、最も近い位置にある4都市、アジアーゴ、アルシエーロ、ヴァルスターニャ、アラのどの3都市を支配するのかをしっかり見定めておく必要があります。また前述した通り、山岳戦ではありますが、部隊機動は思ったより阻害されないので、機動でもって敵の弱い場所を衝く努力が求められるでしょう。

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■砲兵に始まり砲兵に終わる

しかしその「弱い場所」は、ただで手に入るわけではありません。実際にプレイするとわかりますが、絶妙なタイミングに絶妙な場所からイタリア軍の増援が駆けつけ、戦線の綻びを繕っていきます。放っておくと戦線に厚みが増すだけなので、どこかで敵兵力を削って「駒が足らん!!」という状況をつくり出さなければなりません。

ここでIsAの戦闘解決システムを説明しておきますと、戦闘結果表はオッズ式の2d6でこんな感じ。

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戦闘結果のプラスマイナスは損害決定ダイスの目修整になります。だから実際は2d6+色違いダイスで1d6して、その1d6の目で両軍の損害を判定することになります。

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両軍の戦闘参加ステップ数が6以下なら左、7以上なら右のコラムを用います。そこに書かれている値は戦闘解決時に振った色違いの1d6の目に戦闘結果、及び砲兵火力と側面攻撃の修整を加算したものです。1d6の目が大きいと激戦となり、両軍ともに大損害を被ることになります。

戦闘効果値(CE)とは実際にはステップ数みたいなもので、CEのマイナス1と2はマーカーを置いて表示、マイナス3になるとステップ・ロスしてマーカーを取り除きます。実質的にほとんどのユニットは6ステップを持つこととなり、粘り強く戦います。またステップ・ロスは選択ルールを用いない限りは回復しませんが、CEは一定の条件を満たせば回復できます。取り返しがつかなくなるステップ・ロスを覚悟で攻撃を継続するのか、ローテーションを大事にするのか、部隊運用に悩まされます。

戦闘結果表で得られる損害決定修整はよくて+2か+3ですが、それは砲兵の支援射撃の有無程度の値です。砲兵は戦闘力を増加させるのではなく、損害修整で威力を発揮します。つまり、敵を出血させるだけなら、大量の砲兵をぶち込めば1.5:1以上なら何とかなるわけです。例えばAH軍2個旅団がイタリア軍1個旅団(両軍合わせて6ステップ)を攻撃して2:1の戦力比が立ったとして、ダイスの目は7+4なら結果は「+1/R1」です。イタリア軍に砲兵支援がなければAH軍の損害は-1CE、イタリア軍の損害も-1CE+1ヘクス退却になります。1.5:1で同じ目なら「+1/-1」でAH軍の損害は-1CEのまま、イタリア軍は退却なしで-1CEですが、砲兵支援がついていれば-2CEとなり、ステップ・ロス目前に追い込めるのです。

敵に大損害を与える戦術としては砲兵の集中射撃の他にもうひとつ、側面攻撃があげられます。IsAは追加移動コストを支払えばEZOC間移動が可能なので、足の速い山岳歩兵をうまく活用すると側面攻撃を行えます。こちらは戦闘結果表で右2シフトに加え、損害判定でも+2の修整がつくので、側面攻撃と砲兵の組み合わせが成立すると、敵に大打撃を与えることが可能です。

こうした戦術を駆使してAH軍はイタリア軍戦線に「弱い場所」をつくっていかなければならないわけですが、漫然と攻撃していたのでは駄目で、大戦略に基づいてどこに弱点をつくってどう突破しようかというグランド・デザインが求められることになるでしょう。当たり前ですがこの戦術はイタリア軍にも有効なわけで、気をつけないと手痛い反撃を喰らうことになります。

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まだAH軍の勝ち筋が見えていませんが、うまく出血させ続けるとイタリア軍がどこかで破断界を迎えそうな気がして、昨日の敗戦からあれやこれや考えております。あれやこれや考えさせるのは良い作品という証拠でありましょう。


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by yas_nakg | 2017-06-19 09:44 | 海外ゲーム【I】 | Comments(0)

『Counterfact』誌第5号付録『Islamic State: The Coming Libya War(ISLW)』を早速プレイしてみました。主記事を斜め読みしてルールも斜め読みして駒切っていざ。ルールは実質5頁だし、主記事も文字サイズ大きめで老眼にやさしい仕様です。『このシミュ』も見習え。

ISLWの設定としては、(1)リビアとチュニジアの内戦が本格化、(2)シリアとイラクから本気のISIS幹部がやってきて、(3)難民が南ヨーロッパに大挙して押し寄せてきて、どうもこうなならないので2010年代のうちに有志連合がリビアの内戦に介入するのではないか? という筋書きです。主記事は現状分析が中心で、リビアで武装組織の跳梁を許しているとデルナからギリシアの島々が襲われるのではないか(クレタ島まで200マイル、ゾディアックボートなら5時間以下の距離)、その模様がインターネットに公開されると世界中のイスラム過激派を勢いづかせるし、難民に紛れてジハーディストがヨーロッパに侵入、テロを起こすかもしれない。それはけしからんということで、やはり欧米諸国がリビア内戦に介入する可能性があると述べられています。

ISLWはソリテアで、プレイヤーはアメリカ軍とNATO軍、それにリビア国民軍(LNA)、エジプト軍からなる有志連合を率いてISISの勝利を阻むことが目的です。ゲームは全8ターン、1ターンは5回以上の交互アクションで構成されます。有志連合は地上部隊の移動、上陸作戦、空挺作戦、特殊作戦、空爆(ドローンによるピンポイント攻撃を含む)などを行い、ISIS側はチットによってランダムに行動を取ります。8ターンが終わった時点で15点を獲得していればISISが勝利します。得点は生き残っているISISのリーダーの数、占領している資源エリアの数(10カ所あります)、ISISに拉致された民間人や脱出したパイロット、有志連合の損害、コラテラル・ダメージで決まります。ゲーム開始時にISISは9点を獲得しているだけですが、放っておくといろんな悪さをするのでプレイヤーは手遅れになるうちに何か手を打たなければなりません。例えば……

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▲我々ゲーマーにはお馴染みのトブルクにはLNAの勇姿が!
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▲紙コップの1つはISISユニットを収納。もう1つは行動チットを収納

ゲーム開始時、有志連合はチュニジアにアメリカ軍とNATO軍を2個師団相当、東にエジプト軍を有しています。トブルクの国民軍も味方です。彼らに比べるとアメリカ軍、NATO軍のほうが強力なので、とりあえずチュニジアからトリポリ(資源あり)、ミスラタ(同じく資源あり)に攻め込んでリビアに自由と平和をもたらせようじゃありませんか。この2つのエリアを有志連合が支配すれば、ISISの得点は7に低下します。しばらく安泰なはず。

アメリカ・NATOの統合機甲軍団は国境の町サブラタに進出。武装組織の抵抗に遭いますが鎧袖一触。幸い、民間人を巻き込むような戦闘には至りませんでした。さらに投降した民兵から得た情報により、マラーダにISISの幹部が潜伏していることがわかりました。通常戦闘の結果、リーダーの居場所が判明したり、ISISが捕虜にしている民間人の居場所がわかったりします。どちらも放っておくとペナルティになるので、知らないほうが良かったよ! ということもあります。オルタナティブ・ファクトですよ。

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▲突如マラーダに姿を現したリーダー。知ってしまったからには捕まえるか抹殺しないとISISに点が入ってしまうのです。

プレイヤーが行動したら、前述した通りチットを引いてISISの行動を決めます。チット・ナンバーは「7」。チャドからの武器密輸のおかげで次の戦闘でISISが攻撃することがあればダイスの目修整がつきます。チットの中には、「Bombs over the Vatican」、ISISのカミカゼ・パイロットがローマへ飛び、バチカンで自爆するというひどいものもあります。成功率は3分の1ですが、成功するとISISに得点が入ります。誰だ、これ考えた奴。

続いてプレイヤー・ターン。統合機甲軍団はトリポリへの突入を試みます。トリポリは重要拠点なのでISISユニットは最大の5個登場します。

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▲数字は火力。ISIS側のアルファベットはAT=対戦車兵器、AA=対空兵器装備などを表しますが、有志連合の先制攻撃を受けて生き残らない限り反撃はできません。最強の兵器はCIV=民間人で、コラテラル・ダメージのもとになります。

トリポリ攻防戦はあっさり片がついてISIS側は壊滅。しかしコラテラル・ダメージ判定で……

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▲ちょっとこのルールが怪しくて、ConsimWorldのフォーラムでもデザイナーを交えての質疑応答が展開されています。

「戦闘の巻き添えになって死亡した女性と子供の映像がインターネットで拡散」してしまい、ISISは2点を獲得してしまいました。トリポリの資源1点を奪ったのにコラテラル・ダメージで2点を与えたんじゃ意味ないじゃん!! しかもこの戦闘中、NPO団体が拉致されているという知りたくなかった真実を知ってしまいました。それも2カ所も。トリポリを解放してリビアに平和を届けたかっただけなのに、リーダー、誘拐×2、コラテラル・ダメージで5点を献上、資源1点を奪ったので計13点と、リビア沼に足を突っ込んだ瞬間に地獄の釜の蓋が開いてしまったのです。ああ、なんてことでしょう……。

と、ISLWはこんなゲームです。ソリテアではありますが、いやソリテアだからこそ、プレイヤーにISISとの戦いがいかに困難なものか、有志連合のひとつの行動がどのように悪夢の連鎖につながっていくのかをじっくり学ぶことができます。

年内にはISLWのシステムを改良したシリア内戦が出版される予定です。リビアとシリア、両足を沼に突っ込んでこそ見える真実というものがあるかもしれません。よし、買うか。

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by yas_nakg | 2017-02-08 01:05 | 海外ゲーム【I】 | Comments(3)

海外ゲーム【I】


2017 (1):


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by yas_nakg | 2016-02-08 10:05 | 海外ゲーム【I】 | Comments(0)