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『太平洋空母決戦ぷち』的な何か

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コマンドマガジン編集部の中の人にテストプレイ用キットをつくってもらいました。ハガキサイズでも十分なんですが、多少は(プレイしやすくしないと)、ね。

ところで『このシミュ』では2013年から年間「HSG(ハガキ・シミュレーション・ゲーム)」大賞、ゴールデン・スタンプ賞が選ばれていまして、2013年(つまり2012年に発表された作品)では『ノモンハン』(堀場亙氏作)が、2014年は『ゲティスバーグ戦役』(ドナルド・ブース氏作)が選出されています。私、結構HSGをつくってきたと思うのですが、入賞は『アスラの逆襲』の主演女優賞だけです。何とか来年は、この「ハガキの太平洋戦争」で栄冠を勝ち取りたいものです。

で、唐突に戦闘解決システムの話。

『ガザラの戦い』では、「戦闘力+ダイスの目」を比較して、
同数=Contact
少ない=Retreat
2倍以上差=Eliminate
の結果を与えています。これの良いところは、戦闘力3対2の戦いと、戦闘力4対3の戦いは、同じ1差でも決定的な違いを出せるということです。前者は1/36の確率で3戦闘力がEliminateされる可能性がありますが、後者の場合、4戦闘力がEliminateされる可能性はゼロなのです。よって、4戦闘力のユニットはEliminateに関してノー・リスクで攻撃を行えます。そうすると、Retreatさせられるリスク管理だけ行えば、非常に有利に攻撃できることになります。

「ハガキの太平洋戦争」でも同じシステムですが、扱うのが空母戦であることを考慮して
同数=Exchange
にしてあります。
空母1隻=1戦闘力、こちらは出撃時にスタック可能(帰港するまで分割不可)で、4隻以上スタックすれば4戦闘力を確保できます。Exchangeなら両軍が空母を1隻ずつ失いますが、それまで日本軍が1隻も空母を失っていなければ、スタック丸ごと全滅します。慢心です。ということは、4隻対3隻なら、5/36の確率でExchangeが発生し、日本軍空母4隻、米軍空母1隻が失われることになります。何というミッドウェイ。

この5/36の確率を日本軍はどう受け止めるか。出てしまった時に「運が悪かった」とただ諦めるのか、それとも約14%の確率で悲劇が発生することを織り込んで作戦を立てるのか、あるいは(これはゲーム的ですが)慢心を振り払うために5航戦に厳しい戦いを強いるのか。もちろん米軍は、その14%に賭けて戦うことはできません。ならばどこで戦いを有利にするのか。空母4隻対3隻で攻撃を受けると1/9、約11%で全滅の憂き目に遭います。それを踏まえた上で、どこで反撃に出るのか、あるいは出ないのか。5隻ある空母を4隻/1隻で用いるのか、3隻/2隻で使うのかを考えないといけません。

こうした考え方は、昨日のエントリで書いた「選択の科学」につながっていきます。確かにランダム性の強いミニゲーム・システムではありますが、確率を踏まえた上でのリスク管理はプレイヤーの選択にあるのです。勝利条件があって、それを達成するための作戦を練り、その中でどれを選択するか。選択した結果がどう出るかは不作為=偶然。シーナ・アイエンガー教授の言う通り「人生は、運命、偶然、選択という三つの観点で語ることができ」ますが、ウォーゲームもまた、そうなのです。(CV:諏訪部順一)



by yas_nakg | 2014-03-13 09:03

歴史系ストラテジー・ゲームの話が中心です。


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