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『太平洋戦史』主任テストプレイヤー敗れる

昨日のゲームマーケット大阪2014でa-gameブースに立ち寄られた方、ありがとうございました。当日は新刊となる『太平洋戦史』他、『このシミュゲがすごい2014』『明断と誤断 大木毅戦史エッセイ集』など、大勢の方にお買い求めいただき、重ねて御礼申し上げます。




さて、ブース前の試遊卓にて、鹿内氏とさばげ隊長が『太平洋戦史』を対戦されました。鹿内氏は連合軍、さばげ隊長は日本軍担当です。隊長は初プレイ、ルールをインストしてもらいながらの対戦となります。インスト含めてプレイ時間は約2時間30分、途中から観戦したのですが、非常に面白い戦いとなりました。

結論から言えば、日本が1944年に講和を勝ち取っての「勝利」です。

ゲームは1ターン半年で1943年後半(第4ターン。41年12月は戦闘だけ行う第0ターン)に日本軍の累計VPが5以上なら日本軍の、-1以下なら連合軍の勝利でゲーム終了になりますが、その間なら1944年前半までゲームは続き、累計VPが-5以下なら連合軍の、それ以外なら日本軍の勝利となります。両軍とも43年中に決着をつけるのか、それとも44年前半まで引っ張って勝負するのかを決められますが、第2ターン頃には大方針を定めておかないと間に合いません。両者とも、今回はどうも44年で勝負を決めるつもりだったようです。

プレイのコアは「作戦」の実行にあります。艦隊を動かして拠点を制圧していくわけですが、その確実な実行には資源が必要です。資源はカードで表され、カードはその資源として使うか、書かれているイベントを発動するかの二つの使い方があります。資源を使って作戦を行わないなら、ダイスを振り合うことになります。多い目を出したプレイヤーが先に作戦を行い、少ない目を出したプレイヤーが後で作戦を行うという、不確実性を伴うことになります。さらに、同じ目が出た時はゲーム・ルールでは表すことのできない様々な国内・欧州戦線事情により、作戦フェイズは終了します。

序盤、日本軍は限りある資源を使って確実に作戦を行い、勢力範囲を拡大します。連合軍は終盤、潤沢な──しかし無尽蔵ではない資源を使って日本軍を押し返さないといけません。作戦を確実に行うにも資源が必要ですが、一度作戦を行った艦隊を回復させるのにも資源が必要なのです。

1944年、連合軍はマッカーサー・プランを採択。ニューギニア〜フィリピン/インドネシア方面から反攻を企てます。ボルネオ島、シンガポールを順調に奪回したものの、主力機動部隊に再度、作戦を行わせるためには資源が必要です。その資源を確保しておくために、作戦実行をダイスに頼らなければなりません。ここで何回か作戦が続けば、フィリピン解放が可能になります。が、無情にも両軍同じ目を出して作戦フェイズ終了。日本軍のVPはプラスのままで連合軍の敗北となりました。

これには布石があって、前年後半、連合軍は真珠湾からトラックの攻略を目論見ました。トラックは両軍にとっての一大要衝で、ここを起点に作戦展開が可能です。43年前半に連合軍に攻略されるようなことがあると、日本軍は苦戦を強いられますし、43年後半に連合軍が攻略できていないと(別の作戦がない限り)連合軍の苦戦は必至でしょう。それまで、両軍とも南方での戦いで艦船を消耗していましたが、空母機動部隊は健在でした。44年に決着をつけたい連合軍は、就役したばかりのエセックス級空母を筆頭にトラック島攻略に乗り出します。

日本軍の場合、カードは殆ど資源として消費されます。連合軍に先制して行動したい時、あるいは連合軍の作戦に対応するための予備として、手札を持っておかなければなりません。移動中の敵艦隊を攻撃できる(そして大した戦果を期待できない)伊号潜水艦のイベントはその最右翼です。が、さばげ隊長はトラック島に来寇する米艦隊に対して使用、見事〈ワスプII〉を撃沈したのです! もちろん米軍にとってはエセックス級空母といえどワン・オブ・ゼム、だからどうしたレベルの損害ではありましたが、空母1隻の空襲力が減じられたことでトラック島守備艦隊を壊滅させられなかったのです(確率1/6)。もう一撃を加えればトラック島陥落は確実でしたが、ここでも一発で作戦フェイズ終了(確率1/6)。まさに神風が吹いて、日本軍はトラック島を守り抜いたのです。

そのために前述した通り、連合軍は44年にオーストラリアを基地とした無理攻めを強いられることになったわけです。逆にトラック島が落ちていれば、そこを拠点に日本へ攻め込むもよし、フィリピンへ向かうもよし、でした。

ということは、伊号潜水艦による〈ワスプII〉撃沈が太平洋戦争の流れを変えた、戦術的勝利が戦略的勝利に転換されてしまった! というわけです。すごい。

もちろん、第5ターンがもう少し長く続いていたら、とか、第3ターンまでの展開がグダグダだったら、とか、無数のwhat ifは存在するわけですが、少なくとも伊号潜水艦が〈ワスプII〉を標的にするまでの隊長率いる日本軍は適切に戦っていたからこそ、最終的な勝利を呼び込むことができたのです。

最後は鹿内氏、隊長ががっちり講和の握手を交わしておりました。実に感動的なエンディング!



by yas_nakg | 2014-03-10 14:00

歴史系ストラテジー・ゲームの話が中心です。


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